最近SNSやYouTubeで話題になっている「レバナス(iFreeレバレッジNASDAQ100)」ですが、投資初心者が飛びつくにはリスクが非常に大きい商品です。この記事では、手数料や実際のシミュレーションを交えながら、レバナスのメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
1. レバナスとは?
レバナスは、NASDAQ100指数の値動きの2倍を目指す投資信託です。ハイテク株中心のNASDAQにレバレッジ(てこ)をかけることで、上昇局面では大きな利益を狙える一方、下落時の損失も大きくなるのが特徴です。
レバレッジ型投資信託は、先物取引や金融派生商品を利用して2倍の値動きを実現しています。そのため、実際にNASDAQ銘柄を2倍分購入しているわけではなく、金融工学を用いた仕組みで成り立っています。この構造自体が追加コストを生むため、通常のインデックスファンドよりも管理が複雑になります。
特に2020年以降の米国株の急成長により、NASDAQ100は急騰しました。この局面でレバナスを購入した投資家は短期間で大きな利益を得られたため、『夢の投資信託』としてSNSを中心に話題になりました。しかし、相場環境が変わると一気に逆風になることを忘れてはいけません。
2. レバナスの手数料は高い
通常のNASDAQ連動型インデックスファンドの信託報酬は年0.1%未満と非常に低コストです。例えば「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」や「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」などは年0.1%前後です。
一方でレバナスの信託報酬は年0.99%(税込)。加えて、レバレッジを維持するために発生するコストも内包されています。つまり、長期保有すると信託報酬だけでなく内部コストによってじわじわ資産が目減りする点には注意が必要です。
例えば100万円を20年間運用した場合、年率0.1%のファンドと年率1.0%のファンドでは、最終的なリターンに数十万円〜100万円以上の差がつくこともあります。これは『手数料の複利効果』であり、長期投資ではコストの差がそのままリターンの差につながります。
さらにレバナスはレバレッジを維持するために先物を利用しており、ここで発生する調達コスト(金利やスワップポイントなど)も投資家が負担しています。この『隠れコスト』は公表信託報酬に含まれていないため、実際には表示以上に不利になりやすい点も覚えておきましょう。
3. 下落相場でのシミュレーション
レバナスの最大のリスクは「下落時のダメージが大きすぎる」ことです。以下のケースを見てみましょう。
- NASDAQが40%下落 → その後20%回復した場合
NASDAQ:100 → 60(-40%) → 72(+20%回復)=最終-28%
レバナス:100 → 20(-80%) → 28(+40%回復)=最終-72%
同じ相場環境でも、レバナスは資産の7割以上を失う結果になってしまいます。しかも一度大きく下落すると、たとえ市場が回復しても元本に戻るのが極めて困難になります。
例えば、資産が-50%になった場合、元に戻すためには+100%のリターンが必要です。レバナスのように-80%まで下がってしまうと、そこから+400%(=5倍)のリターンが必要になります。市場がいくら回復しても、これを達成するのは極めて困難です。
実際の下落相場では、多くの投資家が『もう無理だ』と感じて売却してしまいます。これは機械的な数字以上に恐怖心を増幅させるため、損失確定による退場リスクが高まります。

100万円を運用するとして、どの程度の下落に耐えられるか?と考えたときに、自分がいくらまでなら許容できるでしょうか?インデックス投資はどれだけ下がっても0にはならないという安心感がありますが、レバレッジをかけると0になり得るので恐怖感は倍増どころではないです。
4. レバナスのメリットとデメリット
メリット
- 短期の上昇局面では高いリターンを狙える
- NASDAQ100の成長性を2倍で取り込める
過去にはNASDAQ100が1年間で+40%以上上昇した局面もあり、そのときレバナスは+80%以上のリターンを記録しました。短期間で資産を2倍にできる可能性があるのは、他のインデックスファンドにはない特徴です。
デメリット
- 信託報酬が高く、長期投資に不利
- 下落相場では資産が急減しやすい
- 元本回復に時間がかかる
レバナスを保有すると、毎日の価格変動が非常に大きくなります。1日で+10%、逆に-10%という値動きも珍しくなく、精神的に耐えられなくなる投資家も多いのが実情です。投資は冷静さを保つことが重要ですが、レバナスは感情を大きく揺さぶる商品といえるでしょう。
5. 長期投資ならインデックスファンド一択
レバナスは「短期で勝負したい上級者向け」の商品です。長期で資産形成を考える20代・30代の会社員にとっては、むしろリスクが大きすぎるのが実態です。
王道は「eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)」や「S&P500」などの低コストインデックスファンドです。手数料も年0.1%未満と安く、複利効果を最大限に活かすことができます。
例えば、S&P500やオルカンは数十年にわたり右肩上がりで成長を続けています。過去のデータを見ても、15年以上積み立てを続けた投資家のリターンがマイナスになったことはほとんどありません。長期投資では『高リスク・高リターンのレバレッジ商品』よりも、『低コスト・長期で安定したインデックスファンド』の方が圧倒的に再現性が高いのです。
インデックスファンドは手数料が低いため、複利効果を最大限に享受できます。数十年のスパンで見ると、この差は数百万円〜数千万円という資産の差を生むこともあります。

NISAも活用して長期目線で運用すべきという前提に立ち返ると、やはりレバナスには手を出さないというのが無難ではないかと。
まとめ
レバナスは魅力的に見える一方で、手数料の高さと下落時の破壊力を考えると「初心者が資産形成に使うべき商品」ではありません。長期投資を考えるなら、手数料の安いインデックスファンドに淡々と積立をすることが最も再現性の高い方法です。
短期的に大きなリターンを狙うならレバナスも選択肢の一つかもしれません。しかし、長期的に資産形成を目指す多くの人にとっては、王道のインデックス投資を選ぶ方が安心かつ合理的です。まずは低コストのオルカンやS&P500をNISAで積立して、『複利の力を味方につける』投資を始めてみましょう。